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耐震等級3と土地選び
建物は建ったまま、暮らしだけが止まる。
そういう壊れ方があることを、この一枚が教えてくれます。

写真提供:横山 芳春 氏(博士(理学)/地盤災害ドクター/だいち災害リスク研究所 所長)
写っているのは倒壊した家ではありません。裂けた道路と、落ち込んだ敷地の境界です。
ここまで地面が動けば、埋設された上下水道もガス管も無事では済みません。車も出せない。建物そのものが無傷であっても、この場所で日常を続けるのは困難です。そして道路と地下埋設物の復旧は、住宅の補修よりはるかに長い時間を要します。
住宅の地震対策は、どうしても「建物が壊れるか、壊れないか」に話が集約されがちです。しかし実際に生活を止めるのは、建物の被害だけではありません。
2026年7月28日、熊本で再び震度7
2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方の深さ16kmを震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。宇城市と八代郡氷川町で震度7を観測。2016年の平成28年熊本地震から10年3か月、熊本県内では3回目の震度7となりました。日奈久断層帯の活動によるものとみられています。
出典:気象庁「令和8年熊本地震」/日本活断層学会 災害委員会
耐震等級3は、もう「検討事項」ではない
まず建物の話を片づけておきます。
2016年の熊本地震で最も被害の大きかった益城町中心部の悉皆調査では、木造住宅の建築時期と被害率に明確な差が出ました。1981年(新耐震)以前の建物は大破以上が約46%、1981〜2000年で約18%、2000年(現行規定)以降では約7%。2000年以降の木造住宅の約61%は無被害でした。
この範囲にあった耐震等級3の住宅16棟のうち、14棟が無被害。
残る2棟も軽微・小破にとどまり、倒壊・大破はゼロ。
出典:国立研究開発法人 建築研究所「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」建築研究資料 No.173/国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書
震度7を二度受けて、この結果です。今回の令和8年熊本地震でも、等級3の住宅は構造体に損傷がなく、内装のクロスに切れが入った程度で済んだという報告が現地から届いています。
加えて2025年4月、改正建築基準法が施行されました。木造2階建てのいわゆる「4号特例」が縮小され、構造関係規定が建築確認の審査対象に。必要壁量の基準も、現代の重い屋根・厚い断熱・大きな開口に合わせて見直されています。
技術的にも、制度的にも、答えは出ています。
構造計算(許容応力度計算)を行えば、木造住宅の大半は耐震等級3に到達できる。
コストとの兼ね合いで等級2に落とすかどうか——そういう検討の余地は、もうありません。夏見工務店では新築・性能向上リノベーションを問わず、構造計算に基づく耐震等級3相当の確保を前提としています。
建物は計算できる。地面は計算で変えられない
耐震性能は設計で引き上げられます。断熱性能もそうです。図面の段階なら、いくらでもやり直しがききます。
変えられないのは、その土地がどうやってできたかです。
- ─かつて川が流れていた(旧河道)
- ─湖や池、内湖を干拓・埋立てした
- ─水田や谷地を造成して宅地にした
- ─地下水位が浅く、緩い砂質土が積もっている
こうした条件は、建物の強度をどれだけ上げても打ち消せません。液状化すれば家は傾き、側方流動が起きれば地面ごと横に動きます。2024年の能登半島地震では、内灘町からかほく市にかけての砂丘の縁で地盤が水平方向に流動し、住宅も道路も引き裂かれました。建物の耐震等級は、この現象に対しては無力です。
そしてもうひとつ厄介なのは、この条件が数十メートル単位で変わること。同じ字(あざ)の中でも、道路一本を隔てて被害の有無がはっきり分かれる。地震のたびに繰り返し確認されてきた事実です。
つまり、災害に強い住まいには二つの条件が要ります。
滋賀の地面は、何でできているか
私たちが家を建てている滋賀県は、地形の成り立ちが実に多様な土地です。
琵琶湖の周囲には、かつて内湖だった場所を干拓した低平地が広がります。野洲川・愛知川・姉川といった河川がつくった扇状地と氾濫平野があり、その中には旧河道が網の目のように残る。山際には段丘や崖錐が乗り、平野との境界には活断層が走ります。琵琶湖西岸断層帯、花折断層帯、鈴鹿西縁断層帯——いずれも県内、あるいは県境の断層帯です。
栗東・草津・守山といった湖南エリアも例外ではありません。田園地帯を造成した分譲地は珍しくありませんし、その下に何が眠っているかは、更地を歩いただけでは分かりません。造成前の姿は、造成後の地表からは読み取れないのです。
三つの時間軸で、土地を読む
では、どうやって土地を評価するのか。
夏見工務店では、全国の地質地盤情報データベース G-Space を用いて候補地の情報を取得しています。全国のボーリング柱状図をおよそ36〜40万本収録した専門家向けのデータベースで、滋賀県のデータも収録されています。
ここから、土地を三つの時間軸で読み解きます。
01 過去を読む — この土地は何だったか
土地条件図・治水地形分類図で地形分類を確認します。旧河道、後背湿地、氾濫平野、自然堤防、扇状地、干拓地。地形分類は、その土地の「出自」です。あわせて旧版地形図と1960〜70年代の空中写真を重ねると、昔からの集落地なのか、田を埋めた新しい宅地なのかがはっきり見えてきます。
02 地下を読む — 何が、どれだけ積もっているか
近傍のボーリング柱状図から地層構成を確認します。N値の分布、緩い砂質土層の深さと厚み、粘性土や腐植土の有無、そして地下水位。液状化を考えるうえで「浅い地下水位」と「緩い砂層」の組み合わせは決定的な条件です。周辺の実測データがあるかないかで、判断の解像度はまるで変わります。
03 未来を読む — 何が起こりうるか
表層地盤の増幅率(同じ地震でも地表の揺れがどれだけ増幅されるか)、液状化の可能性、洪水と内水氾濫の想定、そして浸水した水がいつ引くか。ハザードマップの色は結果であって、その理由は 01 と 02 に書いてあります。
契約前にできること、できないこと
理想を言えば、購入前にボーリング調査を行えば地層も地下水位も直接わかります。しかし売主の承諾、費用、日程を考えれば、一般的な住宅用地の購入判断としては現実的とは言えません。
現実的なのは、候補地が複数ある段階で、同じ物差しに揃えて並べることです。
私たちに言えないこと
「この土地は安全です」— 自然が相手である以上、これは誰にも保証できません。
私たちに言えること
「この3か所を比べるなら、地盤条件はこの土地が最も有利です。根拠はこの柱状図と、この地形分類です」
土地探しの実務では、後者のほうがはるかに役に立ちます。
まとめ
- ■耐震等級3は、構造計算によって当たり前に到達できる水準になった。選択肢ではなく前提条件です。
- ■建物の性能は設計で引き上げられますが、土地の成り立ちは変えられません。
- ■これからの家づくりで考えるべきは、「どう建てるか」以上に「どこに建てるか」です。
- ■夏見工務店では、G-Spaceの地盤データと各種ハザード情報を重ね、候補地を同じ基準で比較してご説明します。
強い家を建てること。
その家を載せる場所を、慎重に選ぶこと。
この二つが揃ってはじめて、ご家族の命と暮らし、そして資産を守る住まいになります。
気になっている土地がある方、これから探される方。売買契約の前にご相談ください。
地盤の比較検討は、複数の候補地でも承ります。お問い合わせフォーム、またはお電話にてお気軽にどうぞ。
株式会社夏見工務店(滋賀県栗東市)|高断熱・高気密の木の家/性能向上リノベーション