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耐震等級3はいくらのマグニチュードに耐える?

EARTHQUAKE & HOUSING

「耐震等級3なら、マグニチュードいくつまで
耐えられますか?」

家づくりの打ち合わせで、必ずと言っていいほど出てくるご質問です。とくに2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震のあとは、お問い合わせが増えました。

結論からお伝えすると、この質問には数字で答えることができません。マグニチュードと耐震等級は、そもそも別の物差しだからです。しかしこの「答えられない理由」を知っていただくことが、実は地震に強い家を建てるうえで一番の近道になります。

マグニチュードは「震源の力」、耐震等級は「敷地の揺れ」に対応している

マグニチュード(M)は、震源が放出したエネルギーの大きさを表す数値です。ひとつの地震につき、値はひとつしかありません。Mが1大きくなるとエネルギーは約32倍、2大きくなると約1000倍になります。

一方、震度はその場所での揺れの強さです。同じ地震でも、場所によって震度7から震度3まで大きく変わります。そして建物の設計で使うのは、当然ながら後者、つまり建設地でどれだけ揺れるかのほうです。

震源のエネルギーが建物にたどり着くまでには、次のような段階が挟まっています。

マグニチュードから耐震等級までの関係 マグニチュードは、そのまま建物に届かない 1 マグニチュード 震源が放出したエネルギー (ひとつの地震に、ひとつの値) 2 距離・深さ・地盤 揺れの伝わり方が決まる (同じ地震でも場所ごとに変わる) 3 震度・加速度・周期 敷地で実際に受ける揺れ (これが設計の入力値になる) 4 耐震等級 建物が耐えられる力 (1.0倍 → 1.25倍 → 1.5倍) 地震の側 建物の側

マグニチュードから耐震等級までは、これだけの距離があります。「M7.5まで耐えられる家」という表現が成り立たないのは、このためです。

M6.5でも震度7、M9.0でも被害ゼロの地域がある

具体例を並べると、この「対応しなさ」がはっきりします。

地震 マグニチュード 最大震度
平成28年熊本地震・前震(2016年)6.57
平成28年熊本地震・本震(2016年)7.37
東北地方太平洋沖地震(2011年)9.07
令和8年熊本地震(2026年)7.17

M6.5とM9.0では、エネルギーにして約5600倍の開きがあります。それでも、どちらも震度7を記録しています。

逆に東北地方太平洋沖地震のとき、震源から離れた内陸部では木造住宅の被害はほとんど出ていません。

令和8年熊本地震も同じです。震源の深さは16km、規模はM7.1。宇城市と氷川町で震度7を観測した一方、熊本県内でも場所によって揺れの強さは大きく違いました。震源が浅く、直下に近ければ、Mが小さくても震度は跳ね上がる。これが地震の実像です。

耐震等級1・2・3の中身をあらためて整理する

では耐震等級は、何に対して何倍の強さを持っているのか。基準になるのは建築基準法が定める地震力です。

耐震等級ごとの地震力の比較 建築基準法レベルを1.0としたときの強さ 耐震等級1(一般的な住宅の最低ライン) 1.0倍 耐震等級2(学校・避難所レベル) 1.25倍 耐震等級3(消防署・警察署レベル) 1.5倍 ※ 建築基準法が想定する地震力に対する倍率

ここで見落とされがちなのが、耐震等級1が保証しているのは「倒壊・崩壊しないこと」までだという点です。数百年に一度の地震(震度6強から7)で建物の中の人の命が守られる、という水準であって、そのあとも住み続けられるという意味ではありません。等級1でも大破・全壊の判定が出ることは十分にあります。

熊本地震で確認されたこと

国土交通省の被害調査によれば、益城町中心部で耐震等級3だった木造住宅16棟のうち14棟が無被害、残る2棟も軽微な損傷にとどまり、倒壊したものはありませんでした。前震と本震で二度大きく揺さぶられた地域での結果です。

マグニチュードより、地盤と周期を見てください

設計する側からすると、マグニチュードの数字そのものより、はるかに重要な要素が三つあります。

1地盤の増幅

軟らかい地盤は揺れを増幅します。同じ地震でも、地盤条件の違いだけで震度が1階級変わることは珍しくありません。滋賀県内でも、琵琶湖沿いの沖積層と丘陵地の地盤ではまったく条件が違います。どれだけ建物を固めても、その下の地盤が入力を1.5倍にしてしまえば意味が薄れます。

2地震動の周期

木造2階建てが最も揺さぶられるのは、周期1〜2秒の揺れです。この帯域の成分が強い地震動は「キラーパルス」と呼ばれ、2016年の熊本地震で多くの木造住宅を倒壊させました。加速度の最大値が大きくても、周期が短ければ木造住宅はさほど揺れません。「震度いくつ」の一言では表せない部分です。

3繰り返しの揺れ

一度目の揺れで耐力壁が損傷し、二度目で倒壊する。熊本地震で実際に起きたことです。余裕を持った設計が効いてくるのは、まさにこの二度目に対してです。

同じ「等級3」でも中身は違う

もうひとつお伝えしておきたいことがあります。同じ耐震等級3でも、壁量計算(仕様規定)で取った等級3と、許容応力度計算で取った等級3では中身が違います

許容応力度計算では、柱や梁の一本一本にかかる力、基礎の配筋、床の水平剛性まで検証します。加えて、上下階で柱がどれだけ揃っているか(直下率)、建物の重心と剛心がずれていないか(偏心率)といった、図面の形そのものが持つ弱点も見えてきます。

夏見工務店では、耐震等級3を許容応力度計算で確認したうえでお引き渡ししています。

まとめ:質問を置き換えてください

「マグニチュードいくつまで耐えられますか」という問いは、次のように置き換えると、はるかに実のある答えが返ってきます。

工務店に聞くべき4つのこと

  • この土地の地盤は、揺れをどれくらい増幅しますか
  • 近くにどんな活断層があり、どの程度の地震が想定されていますか
  • その揺れに対して、この建物は許容応力度計算で確認されていますか
  • 一度目の揺れのあと、二度目にも耐えられる余裕がありますか

滋賀県には琵琶湖西岸断層帯や花折断層帯があり、決して地震と無縁の土地ではありません。建物の性能と土地の条件は、切り離して考えられないものです。土地選びの視点については別の記事でも詳しく書いていますので、あわせてお読みいただければと思います。

ご検討中の土地について、
地盤の履歴や地震のリスクを一緒に確認できます。

出典:気象庁「令和8年熊本地震」関連発表資料、国土交通省国土技術政策総合研究所ほか「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書

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