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低性能な35年前のストックに住むという事
長らくご無沙汰してしまいました。一つは予約をしていた記事がうまくUPされずに(多分自身の設定が悪い)放置、できているだろう!という慢心からでした。戒めが増えました申し訳ありません。
とあるリフォームでのご相談がきっかけでした。ご夫婦は私と同年代、そのお家に住まれて16年とのことでした。「タイルが割れて・・・ついでに下水道も繋ぎたいのです」そうおっしゃる口調はなぜか重たく感じました。で、現場調査。驚きました。築16年ではなく、住まい16年、建物35年、ハウスメーカーのお家でした。軽量鉄骨造の所謂プレファブ造。断熱どころか鉄扉のシングルガラスです。時代背景としてはまああたりまえの仕様なのですね。
さて、当のお風呂といいますと、当時の一般木造建築なら当たり前ですがモルタル掻き落とし+タイル、FRP浴槽と他のハウスメーカーでユニットバスがあったことを考えるとちょっと仕様が低かったのかもしれません。トイレも汲み取り式、キッチンはセパレートキッチン、35年前とはいえ安くないメーカーなのでお客さんには申し訳ないのですがちょっと幻滅してしまいました。
どういった事情で購入されたか聞くと、28歳で土地付きの物件を発見。その時築19年でまあまあ使える間取りと綺麗だった(綺麗に見えた)ので購入。2400万円でローンは30年で約10万円の支払い。ボーナスの無い均等割なので当然元金返済までの期間が長い状況になってしまっていました。入居時はまだ使えた水回りも5年ほどでいろんな不具合が発生。洗面所が壊れ、トイレが壊れ、ホームセンターを友人に繋ぎ繋ぎ納めて来られました。しかし給湯器が7年めで壊れ、むりくり配管をしたために給湯のドロップが起こり光熱費が上がる。必然的にお風呂の時間制約やシャワーが長いと怒られる。そんな生活が続きます。
キッチンは奥さんのアイデアでカッティングシートでお化粧直し。もちろん自分でされました。気分がましになってなんとか今でも使えています!と苦笑いされました。更に下水は本管が通ってはや10年がすぎ、近隣ではそのお家一軒だけが汲み取り+生放流のままでした。水回りの刷新のタイミングを見計らおうとズルズルいままで来たそうです。リフォームローンを組むのは嫌だと一蹴されましたが、理由は元の住宅ローン。金利も高い時代なので現在の収入ではかなりしんどいそう。そこに更にローンなんて考えれない!というのが理由でした。
水回りだけなのかと外部を見渡して愕然。鉄板屋根は穴だらけでシーリング屋根と化し、外壁は片栗粉の様に手のひらが真っ白になる白亜化しており、基礎はクラック、鉄製のあらゆる部分にはサビが浮いている、もう手のつけドコロ満載の状態。挙げ句の果てには隣地共有のフェンスは朽ちているが、隣地の老夫婦はもうここにはおらず、自分で治すしか方法の無いとんでもない状況でした。
私が問題視していることがわかりましたでしょうか?30年前~現在に至るまで作り続けている新築ストックは実はこの程度のものなのです。実際は中古で買ったストックはもう事実上全く機能しない状態で市場に供給され、更に建物性能や程度の評価がなされずに、不動産価値のみで取引されたが為に、たった16年で改修費用は1000万円も必要になってしまう事になってしまっていることなのです。そんなストックが空き家400万戸の内どの程度あるのかを想像すれば、当時真面目に建築していたはずのハウスメーカーですらこうなのだから、かなりの量だろうと推測できるわけなんです。
リフォーム価格を下げるのも重要なんでしょうが、リフォーム業界的には、競争で価格がこなれつつある中で、底値のような気がするのです。京都の工務店の社長曰く、「35,000円の洗面所を5,000円値切るのに3時間掛けて話されるお施主さんがいた」と聞き、いろんな人がいるなあ、変わった人だなぁ、と感心していたが、実はそうではなかったんです、お金が本当に無いんです、ということを本当にひしひしと感じました。
ストックになり得る住宅の場合、次の世代に背負わす量を増やすか減らすかは、今の建物の建て方に非常に依存してしまうのです。そういった内容もお客さんに理解してもらえるかどうかがこれからの住まいづくりに関しての絶対的要素になるのでしょう。心してかかりたいものです。